安曇野市豊科の長峰山山頂付近に、即身仏の塚がある。という話を聞きつけ、探検に出かけた。

というとまた歴史マニアみたいに聞こえるかもしれないけれど、これはハッキリ言ってしまえば「事故」なのである。

幼少期の放課後、親の迎えを待つ暇に任せて小学校の近くにある市営図書館の蔵書を片っ端からパラパラとめくっては棚に戻し、また取り出してめくっては戻す、という作業に没頭していた時、たしか「カルチャー」だと記憶しているがその棚にひっそりと並べられていた「VOW」という、蛍光色の表紙が嫌に目につく本を見つけ、衝撃を受けた。翌日からはそこにあるだけの「VOW2~」数冊を、憑りつかれたように何度も何度も読んだ。あげく、この「カルチャー」の棚にある本は、おそらく全部面白いのではないか、と、適当に棚にあったオカルトや心霊、UFO、UMAにまで移行。「カルチャー」の棚、全読破!を目標に、来る日も来る日もカルチャーカルチャーとつぶやきながら、焦点の定まらない目で毒々しい色合いの背表紙を追いかける日々……。結局つげ義春にたどり着いたあたりで、母が、原因不明の祟り※1のようなものによって体調を崩し引っ越しを余儀なくされたことで、カルチャー三昧に終止符が打たれることとなる。

※1 この話はまた今度どこかで。

そんな幼少期を過ごしたことが原因か、はたまた自宅の本棚に矢追純一の著作や、「ホーキング宇宙を語る」などを並べ、好きな映画は「未知との遭遇」と「燃えよドラゴン」、娘に「この、中古で買うた指輪して寝たら、必ず金縛りにあうねん。かなんから、あげるわ」と渡した、黒い石が瞳のように埋め込まれたシルバーの指輪、がおそらくフリーメイソンのソレだったっていう逸話のある父の影響※2かは定かではないが、不思議なモノ、珍しいモノ、おもろいモノに吸い寄せられてしまう癖がある私だ。

※2 父曰く、若かりし日、京都嵐山付近の上空を飛ぶUFOを母と二人で目撃したことに起因するオカルト好きとのこと。

だから、即身仏とか塚とかミイラとか古墳のような類には、歴史的興味というよりは、ややオカルト目線での関心がある。けど、子ども産んでから元々のビビりがさらなる加速をつけたようで、オカルト関係からは完全に遠ざかって平和に暮らしていた。

が、この「善治塚」 

ゆるい作りが魅力の「万治の石仏」やハッピーツリーフレンズに出てくるみたいなウサギがお出迎えする「神長官守矢史料館」など、地域の珍スポットや、B級観光スポットを巡って写真を撮ってはひとり悦に入っていた私を見て、「嫁は稀代の歴女だ!」と誤解した義父が、案内役を買って出る!と張り切っているのだ。

……だし、ネットにもほとんど載っていないんだ「善治塚」の情報。

もう、見に行くしかないし、書くしかないじゃん。書くしか。



 安曇平を見渡す絶景。光城跡「古峯神社」 へ

安曇野市豊科の光城山山頂に、光城跡と古峯神社がある。まずはちょっと一息つくために、光城山の山頂から絶景をおがむことに。毎春、山道が桜の街道になるころには、多くの観光客が足を運ぶ有名なスポットだ。


登り口まで車で行けます。


あ!木から鬼さんが生えてきてるよ!とかいって娘を脅そうとするカラ元気の母と完全無視を決め込む娘。


もみじを拾ったよ!


道が分かれているよ!!だいたい右だとおもうじゃーん?


はい、左でございましたーーー!!!フウッフーー!!!※3

※3 カラ元気






登山客・参拝客による思い出ノートが置かれた棚。おそらくだがアイリスオーヤマ製。うちの資料ケースとおなじ。






安曇平を一望。絶景。

 光城主の命(めい)により、即身仏となった夫婦が眠る塚 

登山客も多いが、車も通行できるので、子ども連れでもお散歩気分で散策できる。娘も趣味の松ぼっくりや謎の木の実収集に没頭でき満足気だった。

で、本題の「善治塚」である。


光城山を、山頂入り口の車道まで戻り、長峰山に向かい登っていくとすぐに分かれ道の看板に行き当たる。


この道祖神が目印です。


車を降り、振り返ると、こんな風景。思てたんと……違う。なんかもっと、祭られてる感あると思ってた。


安全のため※4 娘はじい様に預け、単独で茂みの中に入っていく。じい様は開けた道路で娘と木の実拾い、石ころ集めなどに興じながら、茂みの中の私に大声で説明をする、というスタイルをとった。

※4 生い茂る草の丈が大人の膝を超えているのと、あと祟り的な何かによる何らかの危険が危ない!!かもしれないので、娘をちかづけたくないと思いまして。


じい様「その横になってるアレあるだろ?それの下がたぶんアレだで」※5

※5 訳)倒れ掛かっている松の下が塚になっているはずである。


じい様「アレ?そっちのホレ桜の木の根元にアレあるだろ?そっちがアレだったかもしらん」※6

※6 訳)奥の方にある桜の木の根元に石仏があるから、もしかするとそちらが塚だったのかもしれない。

私「え、どっち?松の根元にもなんかあるけど?」
じい様「ならそれがアレかもしらん」








私「なんかめっちゃお墓的なものが転がっているんですけど……いいの?いいの?これ?」
じい様「いいのいいの」

私「うっかり踏んだら、祟りとか起きない??」
じい様「だいじょうぶさぁ、はっはっは、その墓、アレだもの、俺の親戚すじ」



私「は?衝撃の事実なんだけどそれ!」
じい様「はっはっはっはっ」



私「この下に即身仏がいらっしゃったりはしないんだよね?」
じい様「はっはっは。さすがにどこかでアレされてるか研究のアレになってるら、学者やなんかがアレしてたって話もあるで※7

※7 訳)どこかの寺院で祀られているか、考古学者の研究材料になったのではないだろうか。









私「てか、多くない?石碑とか石仏みたいの多すぎない?でほとんど倒れてるし!!!!!うわっなんかさわった!!!!!あぁああって葉っぱかぁ」
じい様「その回りの四角い石は、この塚の持ち主の一族の墓だわ」
私「ふぁっっっっ?」
じい様「ははは。大丈夫大丈夫。もう山を降りたとこの地区に墓を移動させてあって、今はそっちで管理されてるんだわ」
私「良かった……」

やたらざっくりとしたガイドを受けつつ、何が何だかよくわからないままパニックのうちに見学終了。ふう。しかし独特の空気が流れる場所であった。神社のように清らかというでもなく、でも決して重苦しさやまがまがしさを感じるわけでもない、でもどこかどっしりとした不思議な存在感がある。無心で手を合わせるとそそくさと車に乗り込んだ。

私「お墓が別の場所にあるなら、正直ほっとしたよ~。足元に誰か眠ってるかもって思うと……」
じい様「……え?」

私「……なになになになに」
じい様「いや……」

私「……え?!!!!」
じい様「昔は土葬だったから、今のように骨壺とかじゃないんだよ。知ってる?桶に仏さまを入れて、山まで担いで運んできて埋めるの」

私「何かの漫画か映画か小説か忘れたけど、見たことあるかも……」
じい様「そうそう。そんなもんだから、墓を移動するにも掘り起こして、っていうのは実際無理があるわけだ。だからそこいらの土だけ、適当に少しだけ持って行って、新しい墓地に埋めるだけだよ」











じゃあ私が今行ってきた場所の下には、アレがアレしてたというのか。デデーン。



















ざわざわ ※8





ざわざわざわ ※8







※8 詳細は後ほど。

言葉少なになりがちな車中だったが、善治塚は遠縁の親戚が所有する墓地も兼ねていたことがじい様の証言により発覚しているので、一応だが関係者ではある、大丈夫。多分。

さらに、後日、完全に別件で訪ねてきた親戚のおばあちゃん(塚の持ち主の一族)を捕まえて、お茶菓子と引き換えに、執拗に問いただした結果、詳しい話を聞くことができた。

親戚のおばあちゃんの話による、善治塚のあらましはこうだ。

おそらくだが、光城を管理していたであろう殿様の命(めい)によって、修行僧というわけでもない地元の一般人夫婦が一対の即身仏になった。松の木と桜の木の下に、向かい合うような形で塚を掘り、塚の中ではそれぞれが経を唱えながら入滅した。二人が生きている間は、塚の中で鈴を鳴らし続けていたため、地元では「ちんちん塚」と呼ぶ人も多い。

おばあちゃんが娘時代、というから50年ほど前だろうか、光城山付近で大きな地滑りの災害があり、周辺に残った集落の人々は、山を降り里への移住を余儀なくされた。その際、一族の墓も同時に里へ移動した。その上、塚のある場所が私有地であったため、現代では管理する人がいなくなって久しい状態。研究者が立ち入り、調査を行うことがたまにあるくらいで、その他に塚の存在を知っているのは昔からの地の人くらいのものではないか、という話だった。

私「じゃあ、即身仏はどこかに保管されているということですか?」
おばあちゃん「え?そのままだよ」
私「え?」
おばあちゃん「え?」

私「研究所とか……どこかのお寺とか……」
おばあちゃん「そのまんま出されなんだよ」
私「即身仏って、ちゃんとミイラ化してるか確認するもんじゃないんですか?いや知らないですけど」
おばあちゃん「そうなの?塚の下で眠ってるはずだから、掘り返したらなんか出てくんじゃない?ふふふふふ」
私「まじか」




じゃあやっぱ、私の足元ではアレがアレのままアレしてたってわけじゃん。


「何年も前だけど、残存する資料やなんかから光城のことや塚の歴史を調べた冊子みたいなのを、親族の誰かが作って親戚中に配ってたから、うちの実家にもあるかもしれない。どこにあるかわからないけどあったら見せてあげるね」というおばあちゃんの言葉に期待して、今回の調査はこれにて終了。この冊子がみつかれば、堂々と出展をつけられる。



せっかくなので長峰山を散策しました。一応観光情報も入れときます。


山頂へ向かう道の途中には、山にありがちなファンシー木彫り人形に出迎えられるレストラン「天平の森」があります。


円ら揚げってなんだろう……


と思ったら、ニジマスの唐揚げだって。美味しそう。

長峰山の山頂には展望台が。




おおー。光城も現存してたら天空の城とよばれたかも知れないなぁ。




謎のオブジェのまわりではしゃぎまわる娘。

ライター ミワアヤノ | Facebook