おんばしら館よいさ!は諏訪大社下社春宮の近くにある、御柱祭を学べる体験型施設だ。

今年は七年に一度の奇祭、諏訪大社御柱祭ということで盛り上がる諏訪地域。せっかく信州に住んでいるのだから、と軽いノリで、上社・山出しにふらり参加してきた私だが、蓋を開けてみれば案外その場の空気にのまれ、大興奮の連続。すっかり御柱祭の魅力に引きずり込まれ、気づけば子を抱えつつ下社・神賑わい・建御柱にまで出向くという沼にはまる。

その祭りのさなか、ひっそりとオープンしていたのが、おんばしら館よいさ!である。

諏訪大社の御柱祭も幕を閉じ、何となく頭がぼんやりしてやる気が起きない、友人のFacebookの御柱関連投稿を遡ってみつめてしまう、重い荷物を運ぶときや椅子から立ち上がる際など、何かしら「よいさ」と口走ってしまう。そうした典型的な「御柱ロス」の症状に悩む諏訪人の心の拠り所となりうる施設だ。






 なんと!下社御柱、最大の見せ場「木落とし」が体験できる! 

御柱祭の概要を説明しないまま、木落としだの建御柱だのって言われましても、という向きもあるだろうが、結構込み入った話になるし、私が参加した上社・山出しや下社・建御柱の様子も追って報告する予定なので、詳細はそっちで。今回はざっくりとだけ。





とりあえず、山で切った8本の大木を、森から引っ張り出して、


人を乗せたまんま急な坂をしゅーっと滑らせ


よいさよいさ!と引っ張り




いろんなところを引っ張り


春宮の境内にどーんと4本建てる


秋宮の境内にもだーんと4本建てる、




そんなお祭り。

やたらあいくるしい作りのジオラマがめっちゃ解説の役に立ったのはさておき、おんばしら館よいさ!の見どころはこんなもんではない。なんといっても御柱祭最大の見せ場、「下社木落としの華乗り※」を体験できるアトラクションが御柱ロスのセンチメンタルなハートを激しく揺さぶる。


※これな!


下社・木落とし・華乗り体験は、別料金200円なり。






よいさ!よいさ!と高まる興奮!


徐々に傾いていく御柱!!


滑り落ちる御柱!に大興奮の母!怯える娘!


柱の後方部分がじわじわとせりあがり、画面に合わせて御柱に振動がくる。「華乗り」は地元でかなりの有力なポジションにある人、御柱祭に対して多大な貢献をした人、かつ、御柱祭に命を捧げる気概のある勇士にのみ与えられた特権であり、地元民でさえ簡単には乗ることができない。それをたったの200円ぽっきりで体験できるのだ。娘は無料だし。家政・経済担当大臣である私の目から見ても納得のアトラクションである。









このおんばしら館よいさ!のいちばんの見どころは、この華乗り体験一択なのだが、もうひとつの特筆すべきポイントはスタッフのおもてなし魂だ。

御柱祭の興奮も冷めやらぬうちに訪問したのに、施設には品のいいたたずまいの老夫婦がいただけで、明らかにスタッフの人数の方が多かった。そのためか、我が家3人と老夫婦は、館長つきっきりでのガイドも受けられた。

手厚い説明を受けているのに、自由人の家人と娘は話も聞かずにその辺をウロウロウロウロ、キョロキョロキョロキョロ。ボタンを押すと光るとか、回すと動くとか、乗れるとかにしか興味を示さない様子。そしてそれがあからさま。仕方がないからせめて、私だけは今館長の話に惹起させられてます感を演出すべく、「へー」とか「ホ~とか」いいながら、うなずいてばかりいたらあんまり写真がとれなかった。

それに、見せ場の華乗り体験でも、法被をどうぞと上流階級のできた奥さんばりに慣れた手つきで着せてくれたり、さっと荷物を受け取ってくれたりと、おもてなし力抜群。なれない私たちはすみませんすみませんと恐縮しすぎて米つきバッタのような有様に。ってよくいうけどなに米つきバッタって。

あげくのはてに、何やらカメラマン?おそらく取材に来ていた地方紙の記者か、あるいは市役所の広報の方だろうか、若い女性が「よかったらお写真撮りましょう」って手を差し出してくれるのだが、私は躊躇してしまう。

だって、あんたの首からぶら下がっているたっかそうな一眼レフとそれについてるなっがいレンズと違って、私のはふっるいEK‐DX、ってかっこよさげに書いてみたけど単なる、いおすきっすでじたるえっくすですし、買った時についてきたダブルズームレンズキットの標準ズームレンズの方がこわれっちまった悲しみで、ランク上のレンズ買い直す金もないし、撮れる写真を気に入ってもいなかったし、同じの買うのもなんか悔しいしって、考えた結果、50㎜の単焦点レンズを装着しているのであります。そんな、初心者だけどちょっとわかってる風なレンズつけといて、腕がないのでオートで撮っている中途半端だし。

そんな経緯で、結局私の手元には望遠レンズと50㎜単焦点しかなくて、写真やられてる方ならふふってなると思いますが、これって完全に選択ミスでして、50㎜とかって標準じゃなくてけっこう望遠の部類に入るみたいなんす。私はいわゆる望遠しか持ってないという、ただの盗撮マニア的な状態に置かれているわけだ。

これ、最初に買ったときは、すごくいい感じに背景ボケるし、レンズが明るいから室内でもぶれないし、神ちがう?神やね!なんて盛り上がりを見せていたんだけど、これ、さすがギリ望遠の範疇に入っちゃうレンズなだけあって、写る範囲が狭い。これはどういうことかというと、アップはきれいに撮れるけど、大きなものや大人数の集合写真、ものの全体像を撮りたいと思ったら、対象からめっちゃ引いて撮らないと入らないのだ。

だから、友人の結婚式でプロのカメラマンさんに友人集合写真頼んだ時も、カメラマンさん忙しいのに超後ずさりして走ってって、会場からいなくなるんじゃないかと心配したほど。友人たちも新郎新婦も、え?え?って顔して写ってたよね。だし、これまでもいくつかの観光スポットをめぐってきたわけだが、8割がた、知らないおばちゃんにフレームインされる。よって私のフリッカーには知らないおばちゃん舐めの観光名所がいくつも残されている。どんなマニアだよ。

一眼レフ持ってる人間に、「撮りましょうか?」っていってくる人というのは、大抵が「腕に覚え在り」状態の自信に満ち溢れたお人だが、私の一眼レフは多くの場合、その自信家をも狼狽させる代物なのである。だからいつもあわわ、大丈夫ですっどうもどうもあわわわ、みたいな感じで、たいして高くもないふっるいカメラのくせにめっちゃ警戒心さらけ出す人間不信こじらせ中年みたいなことになっている。

人間不信と中年はそうだけど、警戒心はかなり低い方の私であるから、あまりぐいぐい来られたので、仕方なくカメラを手渡してしまい、やはりその女性カメラマンをも物理的にではあるが、ドン引きさせてしまって申し訳なかったと思う。

こうした葛藤が繰り広げられている間にも、どんどんどんどん案内はすすみ、気が付いたら親子三人で柱にまたがっている状態に。いえいピースじゃないよばか。ブログに上げる写真誰がとるねん。家人と私で400円はらっとるのに、一緒に乗ってどないすんねん。

慌てて、私だけ降ろさせていただき、家族の思い出用のビデオカメラを回す。そして交代して、家人がブログ用の写真を撮る。

その間、館長とカメラマンと老夫婦は、父親と一回、母親ともう一回、幼児無料をいいことに二回も御柱ライドを楽しむ娘を、終始笑顔で、ときには歓声を上げながら、あたたかく見守ってくださった。

ありがとう、そしてごめんなさい。本当にめんどくさい一家で。いや元凶は私か。


最初は怖がっていた娘も、「もっかいのる!!」と叫ぶ楽しさ。





建御柱のしくみを体験できる装置。こういうものには、家人も娘も興味津々。

 おんばしら館を出た後も、一大イベントが!!


おんばしら館のかたわらには、ビッグサイズの御柱が!!これ、言ったら怒られるかも知れないけど、本物よりデカいと思います。




こんなプロフィール画像にぴったりの一枚が撮影できます!表情にテレがあるので失敗作


敷地内には御柱を曳くときの掛け声「よいさ!」にちなんだ「413」カフェも。

台湾観光で人気の超長いソフトクリームをパクッて、おんばしらソフトとか名づけたら名物になりそうだし、インスタに上げたいだけのために私も買ったと思う……だけどソフトは普通。

おんばしら館よいさ!は、入場料300円、木落としマシン200円がかかるけれど、そのぶん、しっかり親子で楽しめる場所でした。珍スポットが相次いで閉鎖に追い込まれているこの不況の折に、こんなにお金のかかった素敵な施設が新設されるというのは、大変喜ばしいことであります。下諏訪万歳!




※もう、狭いところでの撮影が大変なので、これをポチります。ああレンズ沼。

※もう、今のも古いし、上記レンズと相性抜群だといわれているこっちもポチりたいけど、さすがにもう少し考えます。


三重県菰田の竹成五百羅漢で、興奮しすぎて落としたらしく無くしてしまったこれもポチらなきゃ……三重県菰田在住の方、大日堂の駐車場付近でcanonのレンズキャップ落ちてたらご一報ください。